花粉症を乗り切る「あの手・この治療」 平成31年版
花粉症を乗り切る「あの手・この治療」
今春(平成31年・春)の花粉症は近年になく症状が多彩で重篤だという印象を受けています.花粉症とは「花粉によるアレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎・アレルギー性皮膚炎」の一般呼称ですが、今年は三拍子揃った方が多い。鼻炎から気管支炎を併発して咳喘息様症状を呈する患者さんもあります。
本来ならば耳鼻科の、眼科領域の疾患なのですが、最近では、私達一般開業医も積極的に治療をしております。
そんな当クリニックで展開している「予防法」と「治療法」を公開(おこがましい限りですが・・)してみます。花粉症にまつわる私の思いもチョット。
先ずは、当クリニックで渡している花粉症の患者さんへの啓蒙を兼ねた自家製の「リーフレット】を掲載します。
春の花粉症の方へ
春先に飛ぶ花粉の量は前年度の夏の暑さで決まります
去年の夏は小雨で猛暑でしたね
今年の花粉の飛ぶ量は去年より多い
そして今年の春(2月)の気温は記録的に暖かかった
早くから大量に飛散する
おまけに小雨だった(平年の8から12%ぐらい)
飛んだ花粉が浮遊し続けている
今から準備し・防御してください
日常生活で最も守って欲しい事は家の中に花粉を持ち込まない事です
A.洗濯物を屋外に干さない事!!!
B.外出時は上着を着用し、マスクを勧めます
専用のマスクも効果があります。
コンタクトレンズの方は、この時期は眼鏡をお勧めします
<薬の使用についての具体的な説明>
ハイライト的な説明で全てを網羅している訳ではありません
<経口薬>
6年前(2013年)からディレグラ(ピンクの大きい錠剤)が登場
1日2回 1回2錠 空腹時に定期的に服用
(朝食1時間前と夕食1時間前)の組み合わせ 或いは (昼食1時間前 と 就寝時)の組み合わせ
或いは
就寝時に頓用して下さい (15~20分で、くしゃみ・鼻づまりに奏功します)
<鼻のスプレー>
鼻粘膜の炎症と過敏性を抑える基本的な外用薬
小児には刺激の無いリノコートを勧めています
<点鼻薬 トラマゾリン>
一番辛いのは鼻づまりです
就寝時の「息苦しい!」と言う訴えに著効します
<目薬の使い方>
パタノールは抗アレルギー作用をもつ目薬です
アレジオンはコンタクトレンズ着用のまま使えます
黄色の目薬或いはグレーの目薬は ステロイド゙の点眼薬です
効果は数倍勝りますが、使い過ぎはよくありません
<ピンクの頓服錠剤>
これはステロイド・ホルモン剤です 劇的な効果がありますが、
過度の服用では副作用があります 充分注意して下さい
<.注射>
速効性と持続性がありますが、ステロイド剤なのでお勧めはしません
く強く希望される方」「辛くて堪らないという方」にのみ
充分に副作用を説明して接種します
必ず外用薬 内服薬も併用して頂きます
平成31年2月下旬
佐藤クリニック
2月のバレンタインデーと共に始まり
3月の雛まつりの頃からピークを迎えます
そして、5月のゴールデンウィークの候に終息します
今や春の国民病的ですね。
日本中が朝から晩まで騒いでいます。
上手にくぐり抜けて春を満喫しましょう
花粉の飛散量の予想
昨年末(2018年)から今年の始めの花粉の飛散量の予想は、「中部地方は去年より少し多いぐらい」でした。
<天候が災い>
冬になって特に年が明けてからは、暖かい日が多かった。列車の運休も殆ど無かった。降雪で閉じ込められてしまった列車、自動車のニュースも聴かなかった。河津桜の咲き始めも例年より10日以上早かった。梅も早い。我が家の沈丁花もつぼみが膨らんでおり、昨日の朝(3月4日)には咲き始めました。2011年、東日本大震災の時はまだ咲いていませんでした。つぼみも固かった。そんな記憶がある。
東京でもクリスマスイブから年明け10日まで降水なし、4番目の長さの記録。1月下旬朝、画面に映し出された2枚の富士山の写真を観て驚きました。静岡県側からの写真には降雪ない。「真白き富士の峰・・」ではありません。
降雨量も例年の10%以下だった。1月の名古屋の雨量1.5MM(1976年 1MM それに次ぐ)朝の天気予報で観る高山市内の映像もいつも殆ど雪がなかった。大豪雪地帯である「合掌造り白川村」も道路のアスファルトがむき出しだった。 私の故郷八百津は元々雪の少ない、殆ど降らない地域なのですが、今年は一度も道路が白くなることがなかった。生理的渇水期なので植物の生育には何ら問題なかっただろうが、水で苦労した困った地域もあった。我が家も池の水を入れ替えられなかった。鯉は大変だった。兎に角天気予報では雨が降りそうなのだが、その日になると「パラパラ」で終わってしまった。
<三重苦の春の幕開け>
<例年花粉症の治療を受けている方>
昨年よりも2週間、或いは3週間ほど早めに受診の方が多いですね。そして「異口同音」に「今年は堪らん」「鼻が詰まって寝られない」「目が痒い」「掻き出すと止まらなくて目が腫れてしまう」
<数年振りに受診された方>
この数年、症状も殆ど無くて治ったかと思っていたがとか、この数年何とか我慢出来たのだが、今年はダメだと話される。
<始めて発症した患者さん>
私には、関係ない病気だと思っていた。でも、鼻水が一日中タラタラと出て、夜寝ると鼻が詰まってしまう。頭がボートする。
<感冒症状の合併>
起きている間に鼻の詰まる患者さんはそれほど多く有りません。大半の方は夜寝てからです。というより寝ると鼻が詰まります。その状態で寝ると、朝、喉がガラガラです。パサパサです。2.3日続くと喉が痛くなり、咳が出始めます。夜、鼻が詰まって咳が出始めると鎮りません。肋骨が痛くなるほど、腹筋が痛くなるほどの痛みを訴える方も少なくありません。
これを解消するには鎮咳剤と共に点鼻薬とディレグラの服用が必要です。
註
これは解剖学的な特徴ですが、炎症で鼻腔が腫れているとより詰まりやすくなります。そして副鼻腔に溜まっていた鼻水が咽頭に垂れていきます。それが後鼻漏です。所謂「痰」です。
<ディレグラの特徴>
6年前に日本でも発売が始まりました。それ以前から有る「フェキソフェナフェジン」アレグラ 薬品名)にプソイドエフェドリンをマイクロカプセル状にして加えた薬剤です。
非常に良く効きます。鼻水・クシャミ・鼻つまりから半日開放してくれます。
その問題点
① 空腹時の服用で著効する。私は主に昼食1時間前(生徒には3時間目の終わりを指示)
そして就寝時に服用させています。評判は良好です。
② 練られなくなることがあります。プソイドエフェドリンもエフェドリンの類いです。 漢方の麻黄附子細辛湯、麻黄湯等と同様に目が冴えてきます。
③ 高齢の男子では排尿困難、時には尿閉が起こることがあります。
60歳以上の人には原則1回1錠にしています。
④ 排便後、糞塊を詳しく観察すると透明なマイクロカプセルが見つかります。異常でも 何でもありません。プソイドエフェドリンが封入されていたのです。
⑤ 噛み砕いて粉末で服用することは許されていません。効果が半減してしまいます。
左からナゾネックス・アラミスト・リノコートそしてトラマゾリン(鼻用の外用薬です)
<トラマゾリン>
秘伝(ではありません)の即効性のある鼻つまり解消薬です。花粉症の治療薬と言うより救済薬です。
目薬を点眼するようにして鼻の穴に点鼻すれば、鼻つまりたちどころに解消します。血管収縮剤です。多くの方 に絶賛されています。長期投与による耐性を出来るだけ少なくするために、3倍に薄めて処方しています。
<リノコート>
小学生でも抵抗なく使えるパウダー状の鼻腔内散布薬です。全く違和感がありません。
多少使用方法が面倒ですが、小学生からは『パチ・パチ・パチ』の薬です。
パタノール(左)とアレジオン(右)点眼薬 アレジオンはコンタクトしたままの使用が許可されている
<パタノール>
アレルギー性結膜炎のロングセラー(2006年~)の点眼薬です。点眼時の痛みが殆 どありません。 有効成分はオロパタジン(商品名 アレロック)です。
共にステロイド点眼薬である
<リンデロンA>
掻きすぎて腫れ上がった眼、或いは目脂が付くほどの重症時に使用する.効果は抜群ですが、ステロイド入りの点眼薬なので使いすぎないように必ず注意を促しています。
アズノール製剤(左が点眼右が咳嗽薬)
<アズノール>
ヨーロッパ原産の薬草ハーブが原料です。抗炎症作用・抗アレルギー作用を持ち胃薬、外傷、口内炎、結膜炎、冷え性、風邪薬、美容薬として重宝されている。
花粉症の治療薬としては点眼薬、うがい薬を用意しています。
<<薬剤治療の原則>>
眼の症状には点眼薬で、鼻の症状には点鼻、噴霧薬で対処していきましょう。そして内服薬で体全体を花粉の抗原からブロックする。
<タカサンの花粉症対策>
かなりの花粉症があります。朝起きたら(0530から0600)すぐにディレグラ2錠ととモンテルカスト(ロイコトリエン受容体拮抗作用)1錠を服用します。そして夕方の診療が始まる前にディレグラ1錠を服用します。何故、1錠かというと寝られなくなってしまうからです。夜中に頭が冴え渡ります。これは困るので2:1にしています。友人には尿閉になった人もいますが、今のところ排尿障害は経験していません。鼻症状にはナゾネックスを噴霧しています。眼はパタノールで凌いでいます。朝から晩まで外でランニングをしているとリンデロンAの世話になります。患者さんには私の経験を基にして一生懸命説明しています。納得して頂けると非常に嬉しい。
まずまず、快適な春を過ごしています。
平成31年3月3日 脱稿
蛇足
蛇足も蛇足ですが、私の人生の中で大きな役割を果たしてくれた『平成』の御代があと少しで終わってしまいます。
その平成の足跡を少しでも残したいと思っています。
チョット頑張るかもしれません。おつきあい下さい。
蛇足の蛇足
既に掲載された内容ですが、思い切って再掲してこの優れた治療法を広めたいと思っています。
アレルゲン舌下免疫療法を始めませんか!
2017年春の花粉の飛散量は東海地方(特に岐阜県・三重県)は過去数年のの平均よりもかなり多くなると予想されています。
今から出来る予防法のお知らせです。
2014年からスギ花粉症に対して減感作療法(アレルゲン免疫療法)が我が国でも始まりました。当クリニックも研修コースを終了し、治療開始をこの度、承認されました。
今月から来春のスギ花粉症対策として始めることにしました。毎年ヒドイスギ花粉症でお悩みの方は是非これを機会に開始されることをお勧めします。
治療方の概要
1. この治療法は症状が出る前に始める必要があります。
つまり、来春の対策として始めるのであれば年内に開始しましょう。
2. スギの花粉を毎日舌下する治療法です。初回投与時にはアレルギー反応
の出ることがあります。初回投与は院内で行い30分間経過観察します。
3. 即効性のある治療方ではありません。治療期間は3-4年が一区切りで
す。最初のシーズンで改善を実感する人は60%ぐらいです。2シーズ
ン目には80%ぐらいになります。
4. 対象年齢は12歳以上の小児 及び成人です。
5. 重症の気管支喘息のある方は治療を受けられません。
6. スギ花粉に対する免疫療法ですが、ヒノキとの共通抗原性の為、ヒノキ花粉症
に対してもある程度の効果が確認されています。
7. 詳しい情報を知りたい方は受診をして相談して下さい。
或いは
鳥居薬品の運営する「トリーさんのアレルゲン免疫療法ナビ」を参照して下さい
春の花粉症は
2月のバレンタインデーと共に始まり
3月の雛まつりの頃からピークを迎えます
そして、5月のゴールデンウィークの候に終息します
平成28年11月5日
この歌がラジオから聞こえ始めると花粉症が始まりますね。
私の勝手な思い込みですが、そう思っています。