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インフルエンザウイルスとゾフルーザの決闘(?)

勿論、今年の勝者はゾフルーザです

平成30年秋から31年春にかけての流行

 

国立感染症研究所のデーターから借用

第9週の2月25日から3月3日のデーターでは殆ど発生を認めない白い部分がある。

そして日本全国がまっ赤っかに塗りつぶされた週は4週間、おおく観ても5週間である

2018年の秋、9月頃からインフルエンザの流行が始まっていた。中濃地区でも11月に美濃加茂市で学級閉鎖があった。今年も昨年同様に大流行が予想された。それ故に、11月16日には当サイトでも『インフルエンザ予防接種の呼びかけ』をした。その呼びかけの中で今年から使用が許可された『ゾフルーザ』という新薬の抗インフルエンザ薬を紹介した。この薬に対する期待は大きいと熱意を持って呼びかけたつもりである。そして、予想通り、冬の渡り鳥の到来の時期と共にインフルエンザは今年も流行した。しかも今年は岐阜県の地図が真っ先に真っ赤っかになった。日本地図で示された各都道府県の人口別患者発生件数ではトップだった。01月9日(水曜日)、岐阜県にインフルエンザ警報が発令されました。01月11日(金曜日) 八百津町の和知小学校で6年生が学級閉鎖となる。01月15日(火曜日) 八百津小学校 3-4年生が学級閉鎖となる。01月19日 佐藤クリニックの職員でも1人発生する。01月31日 和知小学校 3年生  学級閉鎖となる。しかしその頃から佐藤クリニックでの平均患者数は2-4人/1日ぐらいとなる。急激に減少する。厚労省の発表では昨年を上回り統計上最多の患者さんの発生(225万人)だと報じられる。定点観測医療機関では、57人平均/1週だそうです。実情とは会わないなぁと思っていたら2月になったら急速に患者さんが減少し始めた。マスコミもインフルエンザの発生状況を報じなくなった。そのまますっかり下火になってしまった。       

例年、2月の中旬以降3月にかけてはA型が減少してB型が流行始める(但し、去年は例外的に年明けからB型が大流行した)はずだ。ところが今年はB型発生は極めて少ない。ピックアップしていないので正確なことは言えないがこれまでに1-2例ぐらいです。

何故だろう何故かしら・・・そしてタカサン先生の愚見

結論から書こう。私の稚拙の結論から書きます。

これはゾフルーザのなせるワザである。

ゾフルーザはウイルスの増殖を阻止します。完璧に阻止します。ということは服用すれば、その患者さんを中心とした拡散が防げるという事です。事実、今年の我がクリニックでの治療の印象としては家族内感染を見事に防いでいます。会社、組織となると侵入経路が複雑ですから早計な結論は禁物ですが、感染経路が辿りやすい家族内感染で観ると、ゾフルーザの効果は見事でした。

そして、特筆すべき事柄は、感染後48時間を過ぎた患者さんにも著効したことです。例年こんな方を何例か経験します。発熱後、数時間後に受診。インフルエンザ迅速検査ではA型もB型もマイナス。一応、発症早期のインフルエンザも考えて麻黄湯、カフコデ、トランサミンを処方し、発熱時にコカールを頓服処方します。そして必ず、言います。「発熱が続いたり、エラかったら必ず来て下さいと・・」。しかし、再受診は3日後。従来のイナビル、タミフル等のノイラミダーゼ阻害剤では処方してもはっきり言って効果がありませんでした。しかし、今年はこんな症例を3例経験しました。『あの薬良く効きました』翌日にはすっかり元気になりましたと報告する患者さんを

薬効作用と上位のエピソードから私は今年の冬、日本では『ゾフルーザ』が爆発的に使用されたことにより、ウイルスは人間の生体内で増殖する機会を充分得られなかった。そのまま消滅(?)してしまった。勿論彼等は(ウイルス)捲土重来を期していると思います。巷では耐性株のことがうるさく論議されていますが、それが本当ならばそこからのウイルスの巻き返しもあるでしょう。

こんな経験的事実も

2018年の統計である。これも国立感染症研究所の試料から借用した。

まっかかっかの期間は短くても6週間、長めに観れば8週間続いている。

白い部分が出てきたのは3月の下旬である。

 

本来ならば、これまでの経験でいけば、『スギ・ヒノキの花粉症』が猛威を振るう春は4月いっぱいまでインフルエンザが長く流行しました。何故なら、夜鼻が詰まるので、口で息をする。朝喉が痛い。ガラガラである。この荒れた喉にウイルスが付く。花粉症をベースにしてその上部に風邪が(インフルエンザ)が乗っかる。治りが悪い。蔓延する。という悪循環があるからです。

今年の春は、花粉症は近年になく症状がひどいが、インフルエンザを合併している人は殆どいない。つまりウイスルがいないという状況ですね。

ノイラミダーゼ阻害剤の場合、インフルエンザウイルスが、周辺組織に感染をうつして広げようとして、細胞の表面から離れようとするノイラミダーゼ酵素を阻害します。阻害剤を服用すると、ウイルスが細胞から離れられなくなり、他の細胞への感染・増殖を防ぐのです。

これに対し、ゾフルーザは、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性を阻害します。転写と合成を繰り返して増殖しますが、ゾフルーザはウイルスの合成を阻むので、増殖を抑えることができるのです。ゾフルーザは、殺ウイスル作用の薬剤です。

タミフル…増殖したウイルスが体の外に出るのを防ぐ
ゾフルーザ…ウイルスの増殖そのものを防ぐ

 

 

                                    平成31年3月13日  脱稿

蛇足

心優しいタカサン先生はこんな事も心配しています。

ゾフルーザを開発した塩野義製薬は案外ほぞを噛んでいるかもしれない。当てが外れた。

記録的な発生患者数と報道された時は、開発部の面々は、経営陣は、声に出して雄叫びを挙げる訳にはいかないが、右手で握り拳を、唇を真一文字にして『よーし』『やった』と達成感で満ちあふれていたと思う。が、急速に流行が下火になってしまいあっという間に終息宣言です。自分で自分の首を絞めた。目論んだ売り上げの・・・バカバカしい人の財布の膨らみ具合を論じるのは止めます。

でも、私達開業医にも意外も意外でした。インフルエンザには掛かりたくない。しかし、流行すれば地域医療に貢献できる.そんな目論見は全く大きく外れました。こんな事を書くと袋だたきに遭いそうですが、医者は、医療は人間の不幸(病気)でメシを食っている因果な仕事です。ある意味、卑しい職業(?)ですが、それでも、今年は例外であって欲しいと書いてはいけませんね。

 

 

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