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タバコの実像と虚像(その2)

ハーム・リダクションから鑑みる加熱式・電子たばこ

 

<ハーム・リダクション(HARM REDUCTION)とは>

有害な事象や行為を禁じたり、排除したりするのではなく、引き起こされる害の低減を目標とすると言うことです。言い換えれば害を及ぼす行為や間橋そのものの阻止や排除を目指すのでは無くて、それらによって引き起こされるリスク・ダメージの低減を図ることを目的とした取り組みです。

例えば
◆車
致死的な死亡事故を招くリスクに対しては、シートベルト、エア・バックの普及、大気環境汚染の一原因である排気ガスに対しては、排気ガス対策(CO(一酸化炭素) NMHC(非メタン炭化水素) NOx(窒素酸素化合物)PM(粒子状物質))がなされている。

◆同性愛者・HIV感染者
感染したくなければ性行為を止めなさいと無理なこと、実行不可能な指導をするのではなくてコンドームの使用を勧める。

◆覚醒剤使用者等の薬物常用者
注射針の使い回しを諫め、使い捨て注射器の使用を積極的に勧める。止めなさいと何度制止しても止非合法薬物の使用を止められない。そこでは、まず感染予防を優先しようとすることですね。

たばこハームリダクションとは、喫煙による害を少しでも減らそうという
近年英国で、米国で新しい芽吹きとして脚光を浴び始めた選択肢です。

 

<それでは加熱式・電子タバコを見てみましょう>

日本では、2013年12月 日本たばこ産業(JT)がブルームを発売しました。(アメリカのブルーム者社からの技術導入 外国では先行発売)

加熱式・電子タバコ

2015年9月、フィリップモリスがiQOSを日本で発売すると、大人気で品薄となり入手困難状態が続きました。(本格的な加熱タバコ)
2016年3月、日本たばこ産業が後継機種ブルーム・テックを発売。
2016年9月、BATがGLOを仙台で発売。12月から全国で発売。
この分野での競争が一段と激しくなっています。

 

<加熱式・電子タバコたばこの特徴>

発がん性物質が90〜95%少ない。
ニコチンは紙巻きたばこと同量含有され摂取する。
「なんだ!」と言いたいが、ハームリダクションの目的は紙巻きたばこからの離脱なのでニコチン含有の代替え品の方が切り替えやすい。
一方
喫煙由来の疾患の原因がニコチンにあるという指摘もある。そんな指摘に対しては毒性が全くない物質は100%有りません。その中で、ニコチンの毒性は比較的低いと考えられている。非ステロイド性抗炎症剤(ロキソニン、ボルタレンなど)では、10000人以上の死亡例の報告があるが、ニコチンでは1〜3例だと苦しい反論が記載されています。一昨年の英国議会では、英国公衆衛生庁が紙巻きタバコの喫煙よりも95%安全と報告し、電子たばこの有用性を提示した。そして、ハームリダクションを勧めるためには電子たばこが推奨されるとした。
喫煙者の喫煙関連疾患の発症リスクを減ずると断定していました。
2016年11月号日経メディカルの記事から

 

<健康影響は未知数と考えるのが正しい!>

たばこを吸う人も、吸わない人も気になるのは、こうしたたばこの健康への影響です。
各社によれば、このたばこは、燃焼によって発生する一酸化炭素や発がん性物質とされるホルムアルデヒドなどの有害物質を大幅に抑えることができるとしています。一方で依存性の強いニコチンは残りますし、有害物質は「減っている」だけで残ってはいます。肺がんなどの病気が減るかは分かっておらず、各社とも「健康への影響を低くする『可能性がある』」とするにとどめていて、周囲の人への影響についても同様の説明をしています。
イメージしかし、「その1」で示したようなタバコのメリットを考える時、加熱タバコは、ちょっと考慮に入れてもよい有用な選択肢かもしれません。

電子タバコiQOSに切り替え美味しそうに喫らす友人  息苦しさがなくなり、快適そう

電子タバコiQOSに切り替え美味しそうに喫らす友人
息苦しさがなくなり、快適そう

 

『結論』

喫煙と聞いただけで忌み嫌い、全面禁煙を宣言することを絶対的な「善」とする意識を改善する一つのきっかけになればと思って書きました。誤解のないようにもう一度、念を押して書きますが、紙巻きタバコは「百害あって一利なし」です。負け惜しみのようなメリットが論じられていますがどう考えても「害」です。職業上、喫煙を止められなくて肺癌で、心筋梗塞で、閉塞性動脈硬化症で健康を害され、寿命を縮めた数多くの患者さんを観てきました。その無念さからすれば、紙巻きタバコの喫煙には反対です。
それでも「タバコを吹かしたいスー族」に対しては寛容であってほしいというのが私の従来の立場でした。しかし、加熱タバコという新しい風が吹き始めました。タバコ愛好者への強力な助っ人が登場してきました。登場して間もないので心配なところもありますが、ちょっと緊張を解いて温かい眼で経過を見てやりたいなぁと思っています。例えば、喫煙習慣が止めたいがどうしてもダメだという外来患者さんに「加熱タバコに変わられたらどうですか!」「今は色々の種類があり、健康上の問題はだいぶ解決がつきました」と勧めたい。積極的に勧め、肯定的に受け入れる環境が作りたいですね。

分煙は絶対に必要

それでも、分煙は絶対に必要です。喫煙者がニコチン中毒になるのは大目に見るとしても、たとえ5%以下だとしても、私達がタールやCOを吸い込むのはイヤです。匂いもキライです。きちんとした分煙は必須です。

 

平成29年1月3日脱稿

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