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タバコの実像と虚像(その1)

今の世の中、タバコを吸う人を白眼視し、喫煙を禁じることは、絶対正義的行為です。この有様は余り好きになれません。中世の魔女狩り、戦前の治安維持法、特攻がらみの労働運動、左翼弾圧、そして戦後アメリカのレッド・パージみたいな色彩を呈している。
何かを悪者に仕立てて、責め立てる。そんな雰囲気、匂いを感じます。
そんな世の中に、少々反発を感じ、天邪鬼的に振る舞い行動してきた自分を省みて見ました。私なりの喫煙に対する考え方を語ります。
まずは中日新聞の記事からです。10年前の記事です。

 

肩身の狭い思いの「たばこのみ」の応援歌

禁煙の嵐にもめげず、私はいまでも、たばこのみである。中日新聞では「少数民族スー(吸う)族」と呼ばれる。
旨いコーヒーを飲み、ぷかりと煙をくゆらすとき、多数民族スワン(吸わぬ)族の方々には申し訳ないが、至福の瞬間を覚える。時間が止まり、精神の静寂が訪れる。
この落ち着きはどこからくるのか。たばこは「吸う」のでなく「吐く」「ふかす」が正しい。ふっーと紫煙を吐き出すときが、醍醐味なのだ。
たぶん、禅の呼吸と同じだろう。五臓六腑が空っぽになるまで息を吐くと、後は自然に空気が入ってくる。これを繰り返して静寂を得る。
この心根にご理解をいただき、スー族とスワン族の静かな共存の道を探りたい。

「平成十八年九月一日 中日新聞朝刊 – 小出宣昭氏の記事より引用」

 

その時の私の感想
こんな面白い記事が載っていました。私はたばこのみではありませんが、今の世間はたばこを白眼視しすぎていると憤慨している一人です。
「1本!」と叫びたくなる心境です。
愛煙家の心のやすらぎになればと思っています。

私はタバコを吹かさない「スワン族」ですが「スー族」に理解を持つ開業医でありたいと考えてきました。が、時代はそれを赦さなくなってきました。勿論「禁煙希望」の患者さんには、ニコレットを、ニコチネルTTSを、チャンピックスを使った「禁煙治療」を応援してきました。
が、禁煙外来が許可された時、敷地内全域での禁煙を求められました。
私の主義・主張とは相反するとして受け入れませんでした。
その時こんな掲示を貼りだし、印刷物を配り禁煙を希望する人のお手伝いから手を引きました。8年前のことです。

 

禁煙治療宣言

喫煙と健康リスクについて
アメリカの研究では、タバコを喫む人の心筋梗塞の死亡率は
非喫煙者の倍以上だと発表されています
肺気腫、慢性気管支炎、肺癌発症のリスクは今更言うまでもない
タバコを囲む環境はまさに四面楚歌ですね
肩身の狭い思いをしている愛煙家も多いことだと思います

新たな挑戦へ
一方、タバコを喫む人の多くは
「止めたいと思っているが、禁煙は無理だと諦めている」

タバコを「スー族」から「スワン族」への新しく華麗な変貌を!!

日本初、禁煙治療に経口薬登場
全く新しい薬剤を紹介します
その概要は
従来のものと違って全くニコチンを含みません
一日2回、12週間服用していただきます
欧米の報告では60〜70%以上の方が禁煙に成功

ご希望の方は受付または院長までご相談下さい
但し
当院では保険治療は出来ません
申し訳ありませんが、全額十割自費です。
(保険治療可能な医療機関を紹介します)

平成二十年六月吉日
佐藤クリニック
院長 佐藤孝充

 

かくして、佐藤クリニックの禁煙応援運動の灯火は消えました。
勿論、今日も正面玄関の一角には灰皿が用意してあります。

蛇足
こんな風潮の、世の中の逆風にもめげないで「喫煙」に対して好意的な企業があります。それはJR東海です。東海道新幹線には必ず「喫煙コーナー」があります。
利用しませんが、ちょっと嬉しくなります。

 

その後の診療室では患者さんにこんなふうに話してきました。
喫煙を止めないつもりはないという強者には
「世の中の風潮に流されることはありません。美味しく、威風堂々とタバコを吹かしてください」「但し、受動喫煙には十分配慮してくださいね。」
止めたくても止められない高齢者には
「ボケ防止だと思ってタバコを喫んで楽しんでください」
負け惜しみではありませんが、自分の信念を言葉を選んで伝えてきました。

最近、ちょっと新しい風が吹き始めました。
先ずは、タバコを医学的に探ってみました。

 

タバコのデメリット

CO
たばこの葉の不完全燃焼でCOが発生する。
血中に入ると酸素の200倍の力でヘモグロビンと結合し酸欠状態になる。
運動能力は低下し、持続力が無くなる。・・・体力低下!!
一酸化炭素は自殺(練炭排気ガス)にも使われる猛毒です。
たばこ飲みは
ニコチンとCOにより、慢性的な酸欠状態になっている。

タール
生の植物を燃やした時の「ヤニ」と々である。
タバコ飲みとはタールをの飲んでいる。
一年間でコップ1杯のタールを飲んでいる。

発がん性
世界で最初に人工的に癌を作った山際・市川の「タール皮膚癌」(ウサギの耳にコール・タールを塗ることにより発がん)からも顕かである。
発がん物質60種類以上有害物質200以上を含む

ニコチン
依存症が問題である。
ニコチン毒は即効性が有り、持続する。

  1. 青酸に匹敵する毒性。殺鼠措剤やゴキブリ退治に使われていた時代もある。毒性は大したことないのだという説が最近台頭してきている。動脈硬化を引き起こす。進行させる。
  2. 精神的・肉体的依存脳が作り替えられてしまう。「ニコチンを吸え」という命令に逆らえない。タバコを1本吸い終わる頃にはニコチンは消えて無くなってしまいますが、ニコチンが脳に及ぼした悪影響は生涯消えません。血管収縮作用により心拍数と血圧が上がり、体温低下する。
  3. 妊娠・出産・育児(成長)ニコチンは水溶性なので胎盤・母乳に含まれる。成長を阻害する。
  4. 20歳前の喫煙は極めて危険である。動脈硬化を進行させ心筋梗塞の発症率が高い(3倍高い)

 

タバコのメリット

ストレスを解消させる
自殺した34,000人の内、20,000人を抽出して調べたら
喫煙者は一人もいなかった。こんな衝撃的な発表もあるのです。

ボケを防止する
タバコに含まれるニコチンには脳細胞のネットワークづくりを促進する効果があり、思考の向上とボケの防止に効果があります。現時点では、ぼけ防止に効果的だというデーターは立証されて折らず、公式には認められていませんが、今後の研究に期待されている。
認知症の患者さんは非喫煙者に多いという印象を持っています。
英国ではアルツハイマーの予防、パーキンソン氏病の予防効果が研究されている。
喫煙者は非喫煙者に比べて、65%もアルツハイマー病が少なかったことが判明

 

2016年12月27日脱稿

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